【読書レビュー】汚れた手をそこで拭かない/芦沢央

今回はこちらの本をご紹介したい。

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汚れた手をそこで拭かない [ 芦沢 央 ]
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芦沢央著『汚れた手をそこで拭かない』である。

書き下ろしを含む五編からなる短編集で、いずれも50P前後と長すぎず短すぎずちょうど良いボリューム感。

移動中等の隙間時間にサッと読めてしまうので、時間潰しに良いだろう。

短編そのものは全体的にレベルが高い。どれも二転三転する展開、上手く張られた伏線にまんまと転がされる私であった。

推理ものがお好きな方には特に良いだろう。反面、明るい展開はほとんどないのでそういった作品をお好みであれば見送った方が良い。

それぞれのあらすじは以下のとおりだ。

『ただ、運が悪かっただけ』

病床に伏せる妻に、物静かな夫が『俺は人を殺したことがある』と打ち明ける。工務店に勤務していた夫当時の迷惑客のトラブルが語られる。

『埋め合わせ』

やってしまった。プールの水が抜けており、何とか隠蔽工作に奔走する小学校教員。ふと同僚と話をし、訝られるが最後には……

『忘却』

軽度認知症を患う妻と暮らす旦那。頻繁に電気工事を請け負ってくれた気の良い隣人が、夏場にエアコンをつけずに亡くなってしまう。しかし旦那は、隣人が亡くなる前に郵送誤配で届いた隣人宛の電気料金納付通知を渡せなかったことを悔いていたが……

『お蔵入り』

何年もかけてようやく会心の出来といえる映画を撮影できた映画監督。しかし直後に主演男優の不祥事が発覚、問い詰めるもその男優は死亡してしまう。更に共演俳優に殺人の疑惑が向けられていることを知り、監督は証言者を説得すべく訪問するが……

『ミモザ』

料理研究家として成功し始めた女性。発売したレシピ本のサイン会に、過去に恋愛関係のあった男が訪問してきた。男は当時、既婚者であったにもかかわらずその女性と不倫関係を持っていた。別の男と結婚し成功を手にした女性と、編集者を辞め離婚し清掃員に身をやつす男。そんな男に金の無心をされ、優越感から女性は借用書にサインをしてしまい……

いずれもネタバレするわけにはいかないが、予想を超えた結末ばかりで非常に面白かった。

何気ない言動が伏線になっていることは読んでいて分かったけれど、それがどんなラストに繋がるのかまでは予測できなかったなあ。


レベルの高い短編集で大変楽しませてもらった。一番印象深いのは『埋め合わせ』かな。

小学校等でプールの水の抜け漏れによる料金請求問題は新聞なんかで時折眺めたことがある。しかしその当事者になったら……と思うと大変な緊張が付き纏う。

正直に告白するか、何とか隠蔽するか。私たちも仕事で大きなミスをかました時に、同様の二択が脳裏をよぎることだろう。

主人公は後者を選んだわけだが、それにしてもどこをどうすれば自然に済むのか、自分に責が向かないようにする工作がいかに大変か。隠そうとするって告白する事よりも何倍も苦労があって、ストレスを覚えるよね。

いつバレるか、誰にバレるか、バレたらどうなるか、そんな心理的ストレスも凄まじいし。

その辺が臨場感たっぷりで描写されていて読み応えもあったし、結末は全く予想してなかっただけに印象深い。

これに関してはぜひ読んでみて味わっていただきたいところだ。

オススメの1冊です。

それでは次回の記事をお楽しみに!

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