8月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2542
ナイス数:198
ウズタマの感想
ウズタマ……ウズタマねえ。確かにキーワードではあるんだけど、タイトルに違和感を覚える。
結婚を控える主人公は、突然父親から大金の入った預金通帳を渡される。詳細を問おうとするも、父親は脳梗塞を発症し意思疎通が不可能になってしまう。真相を探るうち、自分が4歳の頃に亡くなった母親とある事件を知り……という内容。
割とハッピーエンドだし、展開も早くてかなり読みやすい。でも、うーん……作中の出来事とそれに対する登場人物達の心境に共感し難い。
また、主人公周りの人々も都合が良すぎてちと起伏に欠けるかなという印象。
読了日:08月31日 著者:額賀 澪
極楽征夷大将軍の感想
室町幕府を開いた足利尊氏の生涯を、弟と家臣の目線から描いた長編だ。
まさか二段組とは思わず、読了までとんでもない日数をかけることになってしまった。
歴史小説であるが、尊氏の脳天気さや阿保さで随所に笑いが散りばめられており、かなり読みやすい。
情景描写や時代解説も大変深いながらも分かりやすく、読みやすさに拍車をかけている。
しかし長い物語のなかで似たような漢字の登場人物が頻出するため、後半になればなるほど訳が分からなくなってしまった。
足利尊氏への見方が大きく変わった一冊。彼の極楽っぷりを是非ご堪能あれ。
読了日:08月30日 著者:垣根 涼介
ハンチバックの感想
100Pにも満たない短さながら、著者から世間に対する障がい者への目線を強く感じさせられる。
本を読む事すら大変な動作である彼らの生き方は、私の想像の範疇になく、大変感心した。
産まれた時から、肉体の出発点が大きく異なっている人々と健常者の考え方はそりゃ違って当然だよね……。
この何とも言えない読後感や作中の雰囲気はこの人にしか書けないものだろう。知らない世界を知れてとても勉強になったが、それで私はどうだというのだろう。
本作については感想を言語化することが大変難しい。しかし多くの方に読んで頂きたい一冊だ。
読了日:08月18日 著者:市川 沙央
花束は毒の感想
読みやすい文体と気を引く展開で、楽しめた……のは途中まで。オチが分かりやすくて先読みできてしまった点と、そこへの過程が盛り上がりに欠けた印象。
全体的に面白いのに、後半のインパクト不足がちょっと残念だった。
だって明らかに●●は怪しいもん。あまりにそっちを調べなさすぎでは、と途中から違和感を覚えた。
主人公と探偵のビジネスライクな関係性は良かったし、登場人物も好印象ではある。
謎の手紙の内容と被害者の過去に迫っていく展開も悪くない。
300Pほどなので、ほどよい長さであり敷居は低いかと思う。
読了日:08月17日 著者:織守 きょうや
彼方の友への感想
長かったが何とか読み切った一冊。昭和初期の少女雑誌の編集部(者)をモデルにしたもので、当時の風景が大半を占める。
ある程度まで進めばオチは先読みできるが、その展開にツッコミを入れるのは野暮というものだろう。
激動の昭和初期で、男尊女卑の考えが蔓延っていた当時に少女雑誌を刊行する、し続けていくのは相当な勇気が要るのだろう。目新しさは少ないが、昔から固定観念に囚われない人達の頑張りが世の中を少しずつ変えていったんだなと感慨を覚えた。
400p超えであるため読みにくいかも知れないが、読んで損はない一冊だ。
読了日:08月16日 著者:伊吹 有喜
ほろよい読書 (双葉文庫)の感想
お酒にまつわる5人の作家による短編集。
全編を通して感じることは、皆さんお酒が大好きなんだろうなという情報量。
やれ割り方だ、自家製酒のレシピだ、大学での日本酒研究だと枚挙に暇がない。
惜しむらくは私が全くの下戸であることか。こうした知識を踏まえて飲むお酒はきっと味わい深いんだろうなと思うが、私の体質が憎らしい。
話としてはどれも可もなく不可もなしといったところ。ほっこり、ビター、恋愛等のテーマも作者も様々なので読者層の間口は広いと思う。
が、後味のあまり良くない作品もあり、ある種の苦味を覚えなくもない。
読了日:08月09日 著者:織守 きょうや,坂井 希久子,額賀 澪,原田ひ香,柚木 麻子
エゴイスト (小学館文庫)の感想
幼い頃に母親を亡くしたゲイの男とその恋人のお話。
同性愛を描いた作品とは知らずに読んだため、そうした展開に多少驚いた。しかし同性愛を描きつつも、親子関係や母親像にも焦点が当てられておりなかなか読み応えはある。
話としては……可もなく不可もなしといったところ。突然の恋人との別れやその後について、考えさせられるものはある。
が、それまでの過程が個人的には薄味で今ひとつ感情移入できなかった。恋人の過去、内面が更に描写されていればグッと引き込まれたかなあ。
比較的短くて読みやすく、同性愛への理解も深まる。
読了日:08月05日 著者:高山真
本日は大安なり (角川文庫)の感想
うーん。何だかなあ。ある大安の日に挙式する4組のカップルを中心とした群像劇。
気難しい新婦や意味深な双子など、訳アリな人々が集まっている。
登場人物が多く、場面切り替えも頻繁だが、ほとんど混乱もなく読めたため書き分けの巧さに感嘆とした。
話の展開はいずれも予想通りというか、途中からある程度予測もつくかと思うので、過度な期待は控えた方が良さそう。
様々な視点から結婚式という一大イベントを学べ、想像力の拡がりを覚えた。
縁起のために時間と費用を掛ける。世知辛い世の中だけど、こうした気概は忘れたくないものだ。
読了日:08月03日 著者:辻村 深月
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